(思い出の続き)
放冷機の入り口には蒸し米がてんこ盛りに入っている。
放冷機とは、下部のネットがゆっくり回ると順に放冷機の中に入って行き、排風機で風を吸引し冷たい風が蒸し米に当たるという簡単な機械である。
冷えた米はエアーを使って、ホースの中をすっ飛んでゆく。
最初の蒸し米は、麹になるようで室と言う保温された木の小部屋に放冷機から伸びたホースが地を這って入っている。このホースは、所々破れているらしくガンむテープとゴムが巻いて直してある。
麹米を室の中に入れることを引き込みと言うが、引き込みで一番大事なのは温度を32度で入れると言う事で、これはネットのスピードや排風機の風力で調節を行う。
これが難しい。頭が放冷機ベルトのスピードを調節し、船頭が放冷機の上に覆いかぶさり、種振器でもやしを振りまく。私は入り口で蒸し米が切れずに入っていくのをブンジと呼ばれる木のヘラで突っつくのである。
排風機のベアリングが逝かれているらしく轟音が鳴り響くから声なんかまったく聞き取れない。
麹屋が室の扉のところで万歳をしてそのまましゃがみながら手を下げるのを繰り返している。
温度をもう少し下げろというのである。そうするうちに室の中に消え、また出てきて今度は反対にしゃがんでから万歳しながら立って行くのである。今度は温度を上げろと言っているようだ。
しかしそれは途中から見るとどっちなのか解らない。
ホースの中を蒸した米がすっ飛んでいくが、所々破れて直したゴムのところからエアーが漏れてブロロロビイイイイイブウウウウウウと力が抜ける変な音が出ている。なのにみんなまじめな顔で仕事しているのがおかしい。
続く。荒川
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