(思い出の続き)
仕込み蔵を出て釜場に行くと釜屋が、甑を放冷機と呼ばれる蒸し米を冷やす機械の脇に移動させていた。なかなか重そうなので手伝おうとするが何か釜屋は大きな声で怒っている。
この人は、なかなか何時も血圧が高そうである。よっぽどストレスが溜まっているのか。
甑の脇に訳も解らず怒られながら移動させると今度は、木製のビン箱の上に立ってスコップで放冷機に入れろと言う。なぜかまた怒り口調だ。
しかも木製のビン箱も私より年上の人なら見たことあるだろうが一升瓶が10本入る奴で、また不安定でグラグラしている。
それに立って甑の中の何百キロもある蒸し米を土建屋さんが良く使っている大きなスコップで怒鳴られては掘っては入れ、怒鳴られては掘っては入れする。
当たり前だが掘っていくと甑の中の高さがだんだん低くなっていき、だんだん掘るのが辛くなってくる上、蒸し米からの熱気プラス重労働でとても暑く汗が吹き出てくる。
白衣を脱いでタンクトップ一枚で掘り進んでいく。
土建屋さんのバイトをした事が有るが、それよりかなり辛い。
最後まで掘ると今度はひいてある布ごと持ち上げて放冷機入れるのだが、説明もなしで勝手がわからないのでまた怒鳴られる。
甑一つやっとの事で掘り終わるともう一つの甑に入っている蒸気が止められ上に張ってある布が取られる。こいつも掘るのである。
腰が痛いし暑いし上に事あるごとに怒鳴られるからだんだんいらいらしてくる。
この釜屋と4年くらい仕事をしたがこの人は休憩中には別人の様におとなしく借りてきた猫の様だがなぜ仕事中はあんなにイライラしているのかなぞである。
こういう人なんだなと割り切っていたが、一回だけ我慢が出来ずぶち切れた事があったがその話はまた今度。
甑二個掘り終えると今度は掘った物を放冷機で冷やす作業に移る。最初は麹からである。荒川(つづく)
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