(思い出の続き)
大きな鉄扉が人が一人入れる位開いた。どうやら人事担当の人の力が尽きたようだ。
蔵の中に入り、今度は人事担当の人が一生懸命に閉めている。
薄暗い中、天井から光が差しその先に、シューシューと大きな甑が二つ、掛けられた布をパンパンに膨らませ今にも破裂しそうだ。
見たことのないような機械、道具が散乱している。それらは相当古そうだ。
下駄箱らしき物の下に靴と草履が無造作に置かれている。
酒の匂いと蒸した米の匂い、かび臭い匂いが充満している。
中はそれほど寒くない。
まだ八時前で休憩中なのか、人の姿はない。
人事担当の人が鉄扉を閉め終わったようだ。
重労働を終えた人事担当の人が休憩所らしき扉開けた。
灯油の匂い、タバコの匂い、埃っぽい匂いが混ざってこの中は体に悪そうだ。
それに以上に暑い。
扉を開けた瞬間、中から聞こえていた、どこか違う国の人の言葉が止まり、静まる。
何人ものお年寄りがイスに腰掛けタバコを吸っている。
人事担当が
「今度からここに入る、荒川君で今日からしばらくアルバイトと言う形で手伝ってもらいます」と言う。
言葉が解らない。これがジェネレーションギャップってやつかそれともこの人たちは在日アジア人か。
いや違う、新潟弁だ。
中の蔵人と人事担当と何か話をしているが、やはり解らないがどうも差し入れをせがまれているようだ。
いじめられて逃げるように人事担当は休憩所を出て行った。
次は私の番である。
「今日からここでお世話になる荒川と申します。宜しくお願いします」 (次回に続く)荒川
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