事の始まり

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二十歳。
私はリクルートスーツに身を包み、名鉄瀬戸線に乗っていた。
女子学生が多い電車だな。きゃっきゃと世話しなく話をしている。楽しそうだ。
流れる秋の退屈な景色をボーっと眺めながら、自分の不運さを呪っていた。
学校の成績も上位、属に言う一流企業の推薦を二つもしてもらったのに、なぜ就職できないのだろうか。
景気のせい?私と言う人間のせい?不運?学生の分際で結婚し子供もいるようなだらしの無いやつは要らない?
くだらない外の景色を見ているとネガティブな考えが頭に充満する。

終点名鉄瀬戸駅に着いた。ここからバスに乗り換えだ。約束の時間にも余裕があり少し安心する。
割とすぐにバスがやってきて乗り込んでみると乗っているのは私だけのようだ。さみしい・・またネガティブになっていく。面接の時にこれではダメだ、もっとテンションを上げなければ。バスは駅から坂道をどんどん上がって行くのに・・・。

バス停を降りる。まだ時間が一時間以上ある。早く来過ぎたみたいなので近くの喫茶店に行きコーヒーでも飲みながら週間マガジンを読もう。はじめの一歩は面白い。

そんなに時間もつぶせなくなり会社の回りを歩いて調査してみた。
第一印象はなんてボロイ建物なんだ、あちこち崩れているし、直してあろう部分もきっと素人がやったんだと解るレベル。少々不安になってきた。
また敷地がとてつもなく広い。どでかい空き地があるし、後から知ったが国道も跨いでいる。
散策しながらまた考える・・・。子供のことを聞かれたらどうしよう。人手不足、後継者不足の来るもの拒まずのこの酒業界までもふられたら嫁さんに何て言おうか・・・。噂で酒屋さんは、とてもハードな仕事と聞いていたので私に我慢できるだろうか・・・

そろそろ時間だ。表の事務所らしいドアを開け
「今日、面接をしに来ました荒川です。専務さんは見えますか」  次回があれば続く・・・荒川

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このページは、ginjohkoubouが2007年7月16日 10:02に書いたブログ記事です。

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