紅葉も終わりに近づいた頃、やってしまった。
いつも通いなれた近所の峠に続く右カーブで。
カーブの出口めざしアクセルを開けた瞬間後輪が滑った。
タイヤが暖まってなかったのか、昨夜の強風で枝や落ち葉が散乱していたせいか、アクセルを開けすぎたのか。
私が未熟者なのは確かな理由だ。
必要以上にバイクが傾いてゆく。
激しく動く黒いアスファルトに体が叩きつけられる。
私とバイクは180度回転し今来た道に向きを変え後ろ向きにすべり続ける。
バイクから火花が上がっている。
不思議と痛みはまだない。バイクから悲鳴が聞こえる。
滑りながら、バイクと私は摩擦力の違いから引き離されてゆく。
一瞬前は二つの体は硬く一つに絡み合い絶頂期を迎えようとしていたのに。
私はどうやらあのガードレイルの支柱に当たるようだ。
一瞬の記憶喪失。
生きている様だ。左手が無い。いや、くっついているが感覚が無い。動かない。
折れたか?
通行する車が声を掛けてくれる。
こんな恥ずかしい状況だと大丈夫でなくても大丈夫と言ってしまう。
少し左手に感覚が戻ってきた。重いが動く。折れてはいないようだ。
通行人に手伝ってもらいながらバイクを起こし路肩へ運ぶ。
ジーパンが破れ血が出ている。
バイクに詳しい友達に軽トラで迎えに来てもらう。
「こいつ直るだろうか」
「直るよ」
ほっとする。
多くのライダーにとってバイクはただの移動用機械ではない。
私にとっても日本中を旅するかけがえの無い相棒である。
すまない!下手で悪いがもう少し私と付き合ってくれ。荒川
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